【医師監修】高血圧の方に、血圧を下げる食事・食品は?

公開日 2020年9月10日
更新日 2024年9月12日
執筆者:
内科・リハビリテーション科
三田 大介 / 医師
日本には4300万人もの高血圧の人がいると推計されるくらい、高血圧は身近な疾患です。
健康に関するテレビ番組や書籍を通しての情報や、高血圧に関連した病気を発症した人の話などを通して「血圧が高いことは良くないことだ」とみなさん知っていることでしょう。
この記事では、高血圧がなぜ体に良くないのかを振り返りつつ、血圧を下げて健康に生きるにはどのような食事を摂ればいいのかを解説します。ぜひ、自分の食生活を見直すきっかけにしてください。
高血圧とは?
高血圧の基準は?
高血圧とは文字通り「血圧が高い状態」です。
成人で血圧を図ったことがない人は少ないと思いますが、みなさんは自分のいつもの血圧を把握していますか?果たしてそれは正常でしょうか?
高血圧の基準
診察室血圧・・・収縮期血圧140mmHg以上かつ/または拡張期血圧90mmHg以上
家庭血圧・・・収縮期血圧135mmHg以上かつ/または拡張期血圧85mmHg以上
これを見て「まだ自分は高血圧じゃないんだ」とホッとした人もいるかもしれません。
高血圧の診断基準を満たさずとも121-139/80-89mmHgの血圧の人は高血圧に移行しやすく、正常よりも心血管疾患や脳卒中のリスクは高いといわれています[2][3]。
また、診察室でのみ血圧が高くなる白衣高血圧や、逆に診察室では血圧が高くならない仮面高血圧というのもあります[1]。
ドキッとした方は自分の血圧を正しく理解するために、家庭での血圧を図ってみましょう。
また、この記事を読んで少しでも減塩・降圧に興味を持ってもらえればと思います。
なぜ、高血圧がよくないのか?
血圧が高いことが体に良くないということは、この記事を読んでいる方ならみなさんご存知だと思います。
では、なぜ血圧が高いとよくないのかを少し考えてみましょう。
血圧とはそもそも何でしょうか?分かりやすくいうと、「心臓から送られてきた血液によって、動脈にかかる圧力」のことです。
つまり、血圧が高いということは動脈により高い圧がかかっているということになります。
高い圧がかかるということは、当然傷つきやすくなり、傷ついて動脈が硬くなってしまった状態を動脈硬化と呼びます。
高血圧やそれに続く動脈硬化は、心血管疾患(心筋梗塞や大動脈解離、足の血管が詰まる末梢動脈疾患)や脳卒中(くも膜下出血、脳出血、脳梗塞)、腎臓病のリスクになります[1]。いずれも命に関わったり、重い後遺症があったり、生活の質を下げたりする疾患です。
また、高血圧は血管にまつわる病気以外にも胃がん、骨粗しょう症などとも関連しています。
ちなみに、40-89歳の収縮期血圧の平均を4mg下げられれば、虚血性心疾患(心筋梗塞)による死亡率は男性で5.4%、女性で7.2%低下し、脳卒中での死亡率は男性で8.9%、女性で5.8%低下すると推計されています[4]。
血圧を下げる食事➀ 減塩
ラーメンの汁を飲み干す、味の濃いものをたくさん食べたあと、水をたくさん飲んだ経験はありませんか?
塩分をたくさん摂ると喉が乾くのは、血中のナトリウム濃度が高くなるからです。水分を摂ることで濃くなったナトリウムを薄めようとするのです。
水分を摂ると血管を流れる血液の量は増えます。
血圧とは動脈の壁を血液が押す圧力ですので、血液の量が多くなるとそれだけ圧力は高くなる=高血圧となるのです。

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目標とする塩分摂取量
では、どれくらい塩分を減らせばいいのでしょうか。各団体の1日塩分摂取目標は以下の通りです。
1日の塩分量の目安
| 米国心臓病学会/米国心臓協会2017高血圧治療ガイドライン | 3.8g未満[5] |
|---|---|
| 世界保健機関(World Health Organization:WHO) | 5g未満[6] |
| 高血圧治療ガイドライン | 6g未満[1] |
これに対して、令和元年(2019年)国民健康・栄養調査報告によると、日本人の1日平均塩分摂取量は9.3gと報告されています[7]。
これは全世代の平均であり、60歳以上ではほぼすべての年代で10gを超えています。
WHOによる世界の1日平均塩分摂取量10.8gと比較するとわずかに日本の平均の方が少ないですが、上記の目標には遠いという現状ですね。
遠すぎる目標に対し「目標が適切でない!」と思う方もいるでしょう。
この6g未満というのは脳心血管イベントや死亡が抑制できるという複数の研究のまとめにより定められています。
目標は遠くとも、少しずつ減塩を行うことが健康へ続く道なのです。
減塩の食事のコツ
日本人が塩分摂取が多くなってしまいがちなのは、加工食品の摂取が多いからだといわれています。
ということは、加工食品による塩分を減らせば減塩しやすくなるということです。
単純明快なのは加工食品を食べないことや味付けを極端に薄くすることですが、それでは楽しくないですよね。
そこで利用したいのが減塩・無塩の食品や食材です。
データを示している機能性表示食品も多くあります。
「減塩・無塩っておいしくないんじゃないの?」と思う方も、一度試してみましょう。きっと各企業の努力にびっくりすると思います。
血圧を下げる食事➁ カリウム

血圧を下げる成分として、一番にあげられるのがカリウムです。
カリウムは野菜や果物に多く含まれる栄養素であり、ナトリウムを尿に出すのを促進する働きがあります。
つまり、カリウムを摂ることで血圧を下げることにつながるのです。
カリウムはナトリウムの排泄促進以外にも細胞内の水分保持をする、体内の酸・アルカリを適切に保つ、神経の伝達や筋肉機能の調節など、生命を維持するには必須の栄養素です。
カリウムを多く取るには?
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、成人のカリウムの1日摂取量を男性2,500mg、女性2,000mgと推奨しています[8]。
日本人のカリウムの1日平均摂取量は2,299mgと報告されていますので[7]、おおむねクリアできていると言えます。
それでも血圧を下げようとするのであれば、意識してカリウムは多めに摂っていきたいものです。
以下にカリウムが多いものを示すので、参考にしてください[9]。
- 野菜類:切り干し大根、ほうれんそう、枝豆、にら、しそ など
- 果実類:あんず、いちじく、ぶどう、かき、バナナ など
- 藻類:昆布、ひじき、あおさ など
- イモ類:さつまいも、じゃがいも など
- 豆類:大豆、納豆、あずき、豆腐 など
カリウムの過剰摂取に注意すべき例
余分なカリウムは主に腎臓を通して尿として体外に出されます。
腎臓が正常に機能している限り、カリウムの過剰になる危険性は低く、上限量も定められていません。
しかし、カリウムの入ったサプリメントなど排泄能力を超えて摂取する場合、腎臓の機能が低下してカリウムの排泄がしにくくなる場合は注意が必要です。
特に高齢者では気づかぬうちに腎臓の機能が落ちている人も多いので、心配な場合は医師に相談をするとよいでしょう。
血圧を下げる食事➂ 食事パターン
特定の成分・食品だけでなく、食事のパターンが血圧に良い影響を与えることも分かっています。
DASH食
DASH食(ダッシュ食)をみなさんはご存知でしょうか?DASHとはDietary Approach to Stop Hypertensionの略で、直訳すると「高血圧を止める食事療法」という高血圧に特化した食事パターンを指します。
つまり、これまで記述してきた内容をまとめた食事とも言え、これに減塩を合わせることで血圧低下が期待できます。
DASH食では特別な食品は必要ありません。DASH食として推奨されているのは以下の通りです[10]。
- 野菜、果物、全粒の穀物を食べる
- 低脂肪乳製品、魚、鶏肉、豆、ナッツを食事に取り入れる
- 脂肪の多い肉、全脂肪乳製品など飽和脂肪酸を多く含む食品を制限する
- 砂糖入りの飲料やお菓子を制限する
地中海食
地中海食とはイタリアやギリシャなどの地中海沿岸の国で食べられる食事パターンです。
オリーブオイルや魚、野菜や果物を多くとり、牛肉や豚肉、砂糖を使用したデザートを減らすという点で、DASH食と非常に近い食事パターンです。
アメリカのNPO法人OldwaysのHPでは、地中海食ピラミッドを視覚的に分かりやすい図で示しています[11]。
抜粋したポイントは以下です。
- 毎食:果物、野菜、全粒穀物、オリーブオイル、豆、ナッツ
- 週に2回以上:魚、シーフード(エビ、貝類など)
- 週に数回:鶏肉、卵、チーズ、ヨーグルト
- 月に数回:肉、スイーツ
日本の伝統的な食事は血圧に良いのか?
日本人は塩分摂取量が少なくないことから、和食も血圧にとって悪いのではと思われてしまいがちです。
確かに漬物、味噌、しょうゆなど、日本特有の塩分の摂り方もあるでしょう。
しかし、よく考えると日本は長寿の国として知られていますよね。

このギャップを埋める研究が国立がんセンターより発表されました[12]。
この研究では日本食パターンについて8項目から点数化し、死亡率などとの関連を検討しました。
点数化は、ごはん、みそ汁、海草、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶が多い場合、牛肉・豚肉が少ない場合をそれぞれ1点としています。
日本食らしい「一汁三菜で主菜が魚料理」という構成だと点数が高くなりますね。
結果、より日本食パターンの点数が高いグループでは、全死亡、循環器疾患死亡、心疾患死亡のリスクが低いことが分かりました。和食もDASH食や地中海食と同様に健康によい食事だということになります。
面白いことに、日本食パターンが高いグループでは、ナトリウムの摂取量も確かに多かったのです。
しかし、それと同じくらいカリウムの摂取量も多かったために、死亡率が低くなったのだと考察しています。
血圧に関する記述はありませんでしたが、健康のために「昔ながらの日本食」を意識したいですね。
血圧を低くするコツは「継続」
ここまで血圧を低下させる食事について解説しましたが、食事療法だけで目標血圧に到達する人は決して多くはありません。
では、「食事療法には意味はないのか?」というと、それは「No」です。
食事療法を行うことで薬の数が減る、他の生活習慣病(脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドローム、肥満など)を改善するという効果が期待できます。
薬をたくさん飲みたいという人は少ないと思いますので、ぜひ食事の改善に取り組んでみましょう。
また、血圧というのは、例えば数日運動や食事に気を付けたからといってすぐに変化が目に見えるものではありません。
血圧と食事について複数の研究をまとめた報告では、だいたい1か月くらいで効果が出るのではないかとしています[13]。
継続するために、まずは主治医の先生とコミュニケーションをしっかりとりましょう。
家族を巻き込んで、家の調味料を減塩・無塩のものにしたり、機能性表示食品を利用したりすれば継続もしやすいです。
スマートフォンやスマートウォッチなど、自分の生活習慣を可視化できるツールも増えているので、利用してみるのもよいでしょう。
まとめ
この記事では高血圧ついて振り返りながら、血圧を下げることができる食事・食材について解説しました。食事療法は高血圧改善のための基本です。
血圧が高くなるとなぜ良くないのか、今やっている食事・運動療法は何のためにやっているのかを意識するのが大事です。
無理のない範囲でもいいので、継続的に続けていけると良いですね。
- なんといっても減塩。減塩食や機能性表示食品をうまく活用しよう。
- 野菜、藻類などでカリウムを摂取しよう。
- DASH食、地中海食、昔ながらの和食にチャレンジしよう。
[1]日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2019
[2]Kokubo Y, Kamide K, et al. Impact of high-normal blood pressure on the risk of cardiovascular disease in a Japanese urban cohort: the Suita study. Hypertension. 2008 Oct;52(4):652-9.
[3]Asayama K, Ohkubo T, et al. Stroke risk and antihypertensive drug treatment in the general population: the Japan arteriosclerosis longitudinal study. J Hypertens. 2009 Feb;27(2):357-64.
[4]健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_02.pdf
[5]Whelton PK, Carey RM, et al. 2017 ACC/AHA/AAPA/ABC/ACPM/AGS/APhA/ASH/ASPC/NMA/PCNA Guideline for the Prevention, Detection, Evaluation, and Management of High Blood Pressure in Adults: Executive Summary: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines. Hypertension. 2018 Jun;71(6):1269-1324.
[6]WHO HP. Massive efforts needed to reduce salt intake and protect lives.
https://www.who.int/news/item/09-03-2023-massive-efforts-needed-to-reduce-salt-intake-and-protect-lives
[7]厚生労働省.令和元年国民健康・栄養調査報告.
https://www.mhlw.go.jp/content/000711006.pdf
[8]厚生労働省.「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書.
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586565.pdf
[9]文部科学省.日本食品標準成分表2020年版(八訂).
https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/mext_01110.html
[10]the National Heart, Lung, and Blood Institute.DASH Eating Plan.
https://www.nhlbi.nih.gov/education/dash-eating-plan
[11]Oldways.Mediterranean Diet.
https://oldwayspt.org/traditional-diets/mediterranean-diet
[12]Matsuyama S, Sawada N, et al. Association between adherence to the Japanese diet and all-cause and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based Prospective Study. Eur J Nutr. 2021 Apr;60(3):1327-1336.
[13]He FJ, Li J, Macgregor GA. Effect of longer term modest salt reduction on blood pressure: Cochrane systematic review and meta-analysis of randomised trials. BMJ. 2013 Apr 3;346:f1325.