
【医師監修】減塩は危険?デメリットは?意味は無いの?
公開日 2025年2月10日
更新日 2025年3月22日
【監修医師】
消化器内科 総合内科専門医
関口 雅則 先生
(2章・3章部分を監修)
執筆者: 無塩ドットコム株式会社 編集部
目次
初めに
減塩について厚生労働省や様々な医学学会が推奨していますが、一部では「減塩は危険」「減塩はデメリットが多くて体に悪い」といった否定的な意見も存在します。
テレビや新聞では毎日のように減塩を推奨しているのに、ネットでは減塩の危険性を訴える声がちらほら…。一体どっちが本当なのでしょう?
ご存知のように適切な減塩は、高血圧や心臓病、脳卒中などの深刻な病気のリスクを大幅に低減できる事が様々な研究から明らかです。
今回は、「なぜ、減塩が危険と言われるのか」減塩に関するよくある誤解を解き、詳しく解説していきます。 一緒に、減塩の真実を紐解いていきましょう!
1.減塩は危険と勘違いされる理由
減塩が危険と勘違いされる理由がいくつかあります。
減塩食品には「添加物」が多く含まれていると思われている点です。
私たちは、国内最大の減塩専門店「無塩ドットコム」を運営し、減塩食品の開発・製造から販売まで行なっていますが、お客様からもたまに「減塩食品には添加物が多いんでしょう?」と言われる事があります。
そこで、まずは添加物について、解説していきましょう!
「減塩食品は保存料が多い」という誤解について
多くの人は、減塩食品には保存料が多く使われていると思いがち。これは、塩分が少ない分、保存期間を延ばすために保存料が必要だと考えるからです。でも、この考えには誤解が含まれています。
実際のところ、保存料は一般的な食品や調味料にも広く使用されており、特に減塩食品だけが多く使っているわけではありません。
弊社が取引している大手の調味料メーカーへの聞き取り調査でも、「通常の調味料」と「減塩調味料」を比較しても、減塩調味料の方が保存料を多く使用しているという事実はないと開発担当者から確認しています。
さらに、保存料を使用していない減塩食品や調味料も多数存在しています。例えば、減塩専門店「無塩ドットコム」が展開する「塩ぬき屋」ブランドでは、ほとんどの商品で保存料を使わずに商品開発を行なっています。
歴史的には、食材を長く保存するために塩が多く用いられていました。特に、鮮魚が手に入りにくい山間部などでは、塩辛い食事が一般的でした。しかし、現代では、技術の進歩により、塩を使わずに食品を長期間保存することが可能になっています。
例えば、レトルト食品は密閉容器に詰め、高温で殺菌するプロセスを経ることで、無酸素状態で長期保存が可能です。この技術により、減塩でも保存料を使用せずに済むのです。
レトルト食品と同様に、缶詰、びん詰、製造時に容器に密封して高温で加熱殺菌しています。 食品を腐敗させる菌が中にいない状態にする事で、未開封であれば、減塩で保存料を入れなくても安全に長期保存ができます。
また、「塩ぬき屋」ブランドでは、酢を活用した食品もあります。酢に食品を漬けるか、酢の使用量を少し増やすといった工夫によって、保存料なしで食塩を一切使わず長期保存が実現されている食品もあります。
このように、保存料の使用は塩分の量によるものではなく、むしろ企業の方針やスタンスに大きく依存しています。(保存料自体は、安価で長期保存を可能にするため、必ずしも悪いものとは言えません)
当店(無塩ドットコム)では保存料無添加の減塩食品もたくさん取り扱っています。
ポイント
●保存料は減塩食品に限らず、一般的な食品でも使用されています。
●減塩食品が特に保存料を多く使っているわけではありません。
●現代の技術や工夫により、保存料を使わない減塩食品の開発が可能です。
●減塩食品に保存料を使用するか否かは、企業の方針に依存します。
「減塩食品は全て化学調味料が多い」という誤解について
多くの人は、減塩食品は塩分が少ないため味が薄いと考え、そのために全ての減塩食品に化学調味料(うま味調味料)が多く使われていると思いがちです。
これも保存料と同じで、実際には、減塩に関係なく、多くの食品に化学調味料が一般的に使われています。
しかし、実は化学調味料が使われていない減塩食品もたくさん存在します。たとえば、無塩ドットコムの「塩ぬき屋」ブランドでは、ほとんどの減塩食品で化学調味料を使用していません。
では、なぜ化学調味料を使用する食品が多いのでしょうか?
その理由は、化学調味料を使うことで安く簡単に濃い味を再現できるからです。弊社では化学調味料を使わずに美味しい減塩食品を開発していますが、味を濃くするためには、出汁をしっかりと利かせたり、旨味のある素材を増やしたりする必要があり、ひと手間かかります。
一方で、化学調味料は少量入れるだけで手軽に濃い味が実現できます。「塩ぬき屋」ブランドでは、「素材本来の味で楽しめるものには添加物は不要」という方針を取っています。
化学調味料を使うかどうかは、それぞれの企業ごとのスタンスの違いによります。安価に美味しい減塩食品を提供する事を優先して化学調味料を使う企業、少し手間や値段が高くなっても化学調味料を使わずに素材の味を提供する企業、様々な食品メーカーがあります。
安くて美味しい減塩食品や、値段は少し高めだけど素材の味にこだわった減塩食品など様々な食品がメーカーから提供される事で、様々なお客様のニーズに対応しています。
また、減塩専門店「無塩ドットコム」では、化学調味料が少ない様々な食品メーカーの減塩食品を積極的に取り扱っています。
ポイント
●化学調味料は、減塩食品に限らず多くの食品で使用されています。
●化学調味料を使うと、安価に濃く美味しい味が作れます。
●化学調味料を使わない減塩食品も多く、使用の可否は企業スタンスによります。
2.「減塩しすぎると危険」は本当?デメリットはあるの?
「減塩すると体に悪い」「塩は体に必須の栄養素だから、減塩すると体が弱る」「減塩により低血圧になる」などと一部のネットで言われる事があります。これは本当なのでしょうか?
ご存知のように塩分などのミネラルは人間の体には必須の栄養素です。
そのため、塩分を摂取しないで無塩食だけで生活すると、人の体は維持できなくなります。
一方で、塩分を過剰摂取する事は様々な病気の原因となる事が分かっています。
要は塩分摂取量が体に良いか悪いかは、0か100かではなく、程度の問題なのです。では、一体どれぐらいの塩分量が適正なのか、詳しくみていきましょう!
・1日の私たちの塩分量は? 1日の減塩の目安は?
皆さんは、自分が1日にどれくらいの塩分を摂取しているかご存知ですか?
日本人の1日あたりの平均塩分摂取量
日本人は平均して1日に約10gの塩分を摂取しています。
食品別に見ると、カレーには約4g、ラーメンには約7gの塩分が含まれています。
ちなみに国際的には、日本はタイや韓国に次いで塩分の多い国の一つとされています。
*参考文献:橋本壽夫2015「世界各国の塩摂取量 網羅した論文公表」
さて、塩分摂取量が分かったところで、推奨される1日の塩分摂取量の目安を見てみましょう!
1日あたりの塩分摂取量の目標値(成人)
【厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(20年版)」】 | 男性・・・・7.5g未満 女性・・・・6.5g未満 |
---|---|
【高血圧の方の目安】*1 | 6g未満 |
【腎臓病患者の目安】*2 | 3〜6g未満 |
【人工透析患者の目安】*3 | 6g未満 |
【WHO世界保健機関の食事摂取基準】 | 5g未満 |
参考文献:「厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版」
*1 参考文献:高血圧学会の目安 2019年
*2 参考文献:日本腎臓学会 CKD診療ガイドライン2024
*3 参考文献:全国腎臓病協議会
※持病のある方は、必ずかかりつけの医師に塩分摂取量の相談をしてください。
持病のない方の塩分摂取の目標値は、「厚生労働省の基準(男性7.5g未満、女性6.5g未満)」と「WHOの基準(5g未満)」です。
ラーメン1杯の塩分量が約7gなので、これだけで1日の塩分量の目安を超えてしまう事になります!
また日本人の平均摂取量は約10gなので、この目標とは大きく乖離しています。
特にWHO基準と比較すると、私たち日本人は2倍以上の塩分を摂取しています。
これらの基準は、多くの研究者による論文を基に策定されています。
では、なぜ厚生労働省とWHOの基準が異なるのでしょうか?それを理解するには、「厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版」を読む必要があります。
該当部分を要約すると、厚生労働省がWHOの1日5g未満という目標を理想としつつも、現実の日本人の食生活を考慮し、7.5g(男性)と6.5g(女性)未満という実際的な目標値を設定していることがわかります。
つまり、まずは無理のない範囲で減塩の目標を設定することをおすすめします。
今、塩分が多いと感じる方は、まずは厚生労働省の目標を目指して減塩を始めてみてはいかがでしょうか。
塩分摂取量の目安について、さらに詳しく知りたい方は「1日の塩分摂取量の目安は?【2024年最新版】」の記事をご確認ください。
ポイント
●塩分は人間の体には必須の栄養素ですが、日本人は基準値を大きく超えて塩分摂取が多い。
●様々な基準を参考に、無理の無い範囲で減塩を心がけましょう。
・1日の塩分の最低必要量は?減塩しすぎる事はほとんど無い。
では、1日の塩分の最低の必要量はどれぐらいだと思いますか?
ハンバーグ1個分(3.8g)ぐらい?レトルトカレー1杯分(2.9g)ぐらいでしょうか?
実は、
1日の食塩相当量の必要量 *・・・・1.5g
*参考文献:「厚生労働省 日本人の食事摂取基準2020年版」
とされています。これは、味噌汁1杯の塩分量と同じ程度です。
皆さんが思っていたより少なくありませんか?
一般的な日本人の食事の塩分量が10g程度である事から、1/7程度が必要量です。
「厚生労働省の日本人の食事摂取基準」でも、「通常の食事では日本人の食塩摂取量が 1.5 g/日を下回ることはない。」と書かれています。
一部のネットでは減塩によって「塩分不足による電解質バランスの乱れ」「低ナトリウム血症」「代謝機能の低下」など様々なデメリットが書かれる事があります。
上記の1日の塩分の必要量が非常に少ない事から考えて、一般的な減塩生活において「減塩しすぎて塩分不足により体が弱って危険である」という懸念はほとんど必要無い事がお分かりいただけると思います。
ポイント
●1日の食塩相当量の必要量 は1.5g
●通常の減塩生活で、塩分不足になる事はほとんどありません。
・夏場の減塩は危険なの?
では、夏場の減塩はどうでしょうか?
以前は、熱中症対策によく塩分を摂るようにテレビでは言われていましたよね。
でも最近は、夏場の塩分摂取の報道が少なくなったと思いませんか?
実は、日本高血圧学会や、国立循環器病センターでは、夏場でも適切な減塩を推奨しています。
なぜなら上記でも説明したように日本人の1日の塩分摂取量は、基準を大幅に超えているからです。
確かに夏には汗をかく場面がありますが、日中を涼しいクーラーのある部屋で過ごす方も多く、塩分摂取量が過剰になる傾向は続いています。
また夏場での運動も多くの場合、少し散歩をしたり、買い物にいったり程度では無いでしょうか?
その程度の運動の場合は、汗の量も少ないので、塩分を追加で摂取する必要は少ないと考えられます。
一方で、大量に汗をかく長時間の運動や仕事をする場合は、水分補給と共に塩分補給もするようにしましょう。
ポイント
●日本人は塩分摂取が多い為、夏でも適切な減塩が必要です。
●長時間大量に汗をかく運動や仕事をする場合は、水分補給と塩分補給をしよう
参考文献:日本高血圧学会
https://www.jpnsh.jp/general_salt_01.html
参考文献:国立循環器病センター
https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/diet/low-salt/
「天然塩なら減塩しなくても良い」は本当か?
ネットでは、「精製塩は減塩が必要だけど、天然塩なら減塩せずにたくさん使うと良い」と言う意見が見られます。
まず、精製塩と天然塩の違いを確認しましょう。
「精製塩」とは、
イオン交換膜製塩法という方法により、海水から不純物を限りなく取り除き、塩化ナトリウム99%以上にしたお塩です。
「天然塩」とは、
明確な定義はありませんが、海水を乾燥させ、塩化ナトリウム以外にも様々なミネラル成分であるカリウム・マグネシウム・カルシウム・亜鉛・鉄等を配合したお塩の事をさします。
一部のネットでは、「天然塩は、人の体に必要なミネラルが豊富な為、減塩する必要が無く、むしろたくさん摂取すべき」と言うのです。これは本当でしょうか?
この主張は、WHO(世界保健機関)が発表している「減塩に関する誤解」の中で明確に否定されています。
WHO(世界保健機関)「減塩に関する誤解」
“天然”だというだけで海塩は製造塩より良いわけではない参考文献:内閣府食品安全委員会資料
https://www.fsc.go.jp/fsciis/foodSafetyMaterial/show/syu04510700294
精製塩にも天然塩にも、主成分である塩分(ナトリウム)が豊富に含まれていることに変わりはありません。
世界中の医学会や各国の政府機関は、健康のためには塩分(ナトリウム)の摂取量を減らすべきと提言しています。
そのため、精製塩であろうと天然塩であろうと、減塩の必要性は変わりません。
一方で、食事に天然塩を使うメリットもあります。
先ほどの説明のように天然塩にはミネラル分が多い為、100gあたりの食塩相当量(塩分)が精製塩と比較して10%から30%程度低いのです。
ですので、料理に同じ量のお塩を使うと、天然塩の方が精製塩よりも食塩相当量が10〜30%程度低くなります。
さらに、ミネラルの苦味や雑味、旨みによって、料理に複雑な風味が加わり、減塩でも美味しく食べられます。
無塩ドットコムでもオリジナルの室戸海洋深層水100%の天然塩「塩ぬき屋50%減塩 極み塩」を販売しております。ご興味のある方はぜひショップをご覧ください。
ポイント
●「天然塩なら減塩しなくても良い」という考えは誤解です。
●天然塩でも精製塩でも適切な減塩が必要です。
●天然塩は、精製塩と比較して、10%から30%程度食塩相当量が低く、雑味があり、減塩料理に使うのはおすすめです。
まとめ
これまで解説してきたように、「減塩は危険である」という主張は、様々な誤解によるものです。減塩食品と添加物の関係、減塩による健康への影響について、正確な情報を理解することが大切です。
まず、減塩食品に必ず添加物が多いというのは誤りです。
確かに、減塩食品には味や保存性を補うために保存料などの添加物が使われていることもありますが、それは一般的な食品も同じです。
また保存料や化学調味料(うま味調味料)など無添加の減塩食品も多く存在します。添加物の使用は、企業の製品開発方針によって異なります。
また、「減塩しすぎると体が弱る、危険だ」という主張についても、過度な心配は不要です。通常の食生活において、適切な減塩を心がけていれば、塩分が不足することはほとんどありません。むしろ、多くの研究によって、減塩は高血圧をはじめとする様々な生活習慣病の予防や、既存の病気の悪化を防ぐ効果があることが示されています。
私たちは、多くの方が無理なく適切な減塩を続け、より健康的な生活を送れることを願っています。
各章のおさらい
●添加物は、一般的な食品に使われており、特に減塩食品の全てに添加物が多い訳ではありません。無添加の減塩食品はたくさんあります。
●添加物を入れるかは企業のスタンスの違いによります。
●日本人の塩分摂取量は様々な基準と比較して多いので、適切な減塩が必要です。
●通常の減塩生活において、塩分不足になる事はほとんどありません。
●天然塩も精製塩も減塩が必要です。